「東洋思想と心理療法」研究会
Association for Oriental Philosophy and Psychotherapy
第12回研究会
2010年3月13日開催
会場:駒澤大学中央講堂
教育講演
「日本の家族、米国の家族そして家族療法」
講師:中村伸一(中村心理療法研究室)
司会:佐藤 豊(防衛医科大学校)
特別講演
「アイヌ民族と共同体 ―アイヌ民族の方をお招きして-」
講師:宇井眞紀子(武蔵野美術大学)
講師:島田あけみ(「アイヌウタリ連絡会」事務局長
「世界先住民族ネットワーク・アイヌ」
事務局長
「ペウレウタリの会」 副会長)
司会:賀陽 濟(西東京心理療法研究所・田無神社)
シンポジウム
テーマ「集団と個、東洋文化そして心理療法」
「或るソーシャル・クラブでの対人恐怖者たち」
シンポジスト:高橋 徹(国土交通省本省診療所)
「個と集団のアイデンティティーの2層性
―自己確証モデル(石山)における「自覚」と「生きがい」について―」
シンポジスト:石山一舟(ブリティッシュ・コロンビア大学
東京大学)
「僧堂生活における集団と個」
シンポジスト:西田正法(大本山永平寺)
指定討論:西園昌久(心理社会的精神医学研究所)
司会:大山みち子(武蔵野大学・広尾心理臨床相談室)
司会:本橋弘子(CLA湯島心理臨床研究所)
心理療法において、治療者自身は元より、クライアントという「個」(という存在、はたらき)の中に「集団」を「観、とらえ、扱う」ことが、大事なことはいうまでもないでしょう。このばあい、集団は、個人に関わる「社会」(家族、仲間などといった、相互の有機的なつながりを持つ個の集合体)であり、個人の内的で且つ外的な「文化」(個人自身とこれに関わる家族や仲間の伝統・習わし・しきたり、宗教や信仰を含む)や「地域性(ローカリティ)」(どのような環境を選び、棲み分け、その中で生活しているかなど)、仏教でいうところの「山川草木国土」という意味の「自然(衆生)」を離れて語ることができないもの、ということがいえます。これは日常の体験の世界においても、同様です。
そして、このような「集団」(の存在とはたらき)の中にある、「個」を観ることを通して、「同時」にその「集団」について(主に心理療法上で大事な素材として)想像し考え続けることは、もう一方の要です。
個について考え、意識を向けていく時、「集団」は、あたかもその姿を失いますが、治療者の「個」の中に「集団」を観ていくという「観察」の工夫によって、集団と多様な形で関与している「個」の奥行きのある実体とそのはたらきが現前してくるといえます。このとき「個」を「個」として、徹底して理解し分析していくことは、心理療法の必要な条件で、これはこれで全うしていかねばなりませんが、一方、集団は集団として、そこに観察し体験できることを、尽くすことが重要です。
そして「個」は只集まることによって単純に「集団」となるのではなく、文字通り個々が西田幾多郎の云う、「非連続の連続」「同・一・多・異」という存在、はたらきそのものであります。十分な観察を通して、このような個と個の微妙なはたらきの中に、「集団」を見て取ることが出来る訳です。
さて、今回は、森田療法、日本人の対人恐怖心性の研究、禅の僧堂生活における修行とその指導、「家族」に関する治療と研究、といった立場や分野の方々によって、東洋における「個と集団」を視野に、もろもろと議論して戴く予定です。このようなテーマに関心を持たれる多くの方々のお出でをお待ちしています。