
ヒトは、「子ども」は「子ども」として、「大人」は「大人」の分際として、生きながら混沌と安定の中を通過し、各々の人生を全うしている。このようなライフサイクルを連続している過程-子どもから大人へと物理的生物学的な時間の制約のあるものとして捉える考え方-と考えるならば、子どもはどのような機会を経て「大人」の姿へと変遷するのだろうか。
個としての私たちは、内なる思春期という心性を抱えながら、一方で「器」としての身体的な成熟期を迎えることになる。このような身心の微妙で且つ、至極動的な均衡の波を通過していく。あるときは記憶の中に残っている「子ども」世界を内省的に自覚しながら、それをあたかも実体験の「子ども」の如き姿として認識し、童心に還って「遊び」、そこから世界を視、感じ取る存在としての「子ども」体験をし直す。この身を感じ取りながら、現実の集団社会の中で、機会を経ては幾度となく「子どもから大人への変遷」という、いわば「遊び体験」を繰り返していく。
今回は、大人へのイニシエーション-現代の思春期を考える-と題して、現代社会の日本の文化の中で、思春期的な課題が「大人へのイニシエーション」と結びつきながら、どのように現れ扱われてきているかについて、精神医学、民俗学、心理学など、さまざまな観点から分析し直していきたい。